子供の長引く咳

咳が長く続いて困っているお子さんはたくさんいらっしゃいます。咳が出始めて3週間以内の場合は、風邪やウイルスなどの感染症が原因であることが多いと言われています。一方で3週間以上咳が続く場合は、風邪以外の原因(喘息や後鼻漏など)が多くあるため、医師の診察や検査が必要となってきます。また3週間以内の咳でも、RSウイルスによる細気管支炎ではゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴や呼吸障害が出て、吸入治療や入院が必要となるケースもみられます。
ここではお子様が咳が続く場合に、その原因や病院での診察や治療が必要なときはどのような場合かについて説明したいと思います。

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咳の期間

咳の出始めから3週間以内の場合

発症してから3週間以内の咳として多いのが、感染症です。風邪を始めとしたウイルス感染症が最も多く、その他にマイコプラズマ感染症や百日咳などもあります。子供の場合にウイルス感染症では、RSウイルスなどによる気管支炎(細気管支炎)やクループ症候群などが多くみられます。

最近では新型コロナウイルス感染症による咳もよくみられます。大人と比較すると、子供のコロナではやや症状が少ないというような報告もあります。

感染症による咳では、咳に加えて以下のような症状が見られる場合は、呼吸状態が良くないケース、もしくは重症化するサインと思われるので、治療や入院が必要になると考えたほうがよいでしょう。

  • 陥没呼吸やシーソー呼吸がみられる
  • 強い喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー音)が聞こえる
  • 食事や水分が取れずぐったりしている。
  • 強い呼吸困難がある

子供でみられる危険な呼吸(シーソー呼吸など)については、こちらの動画がとても参考になります。

動画を見る

 



咳が出始めてから3週間以上経過している場合

咳をする子供子供の場合、大人と同様に3週間以上咳が続く場合に、しっかり検査を行って調べることが望ましいと考えられています。これは、時間が経過するにつれて、風邪などの感染症の可能性が減ってくるからです。子供の風邪(上気道炎)による咳は1週間で50%程度が改善し、2週間経過すると90%以上改善すると言われています。そのため3週間以上続く咳は、他の原因を調べたほうがよいのです。

3週間以上続くような子供の長引く咳の原因で考えられるのは、

それぞれの咳の特徴について説明します。

3週間以上咳が続く子供に考えられる疾患

後鼻漏(こうびろう)

後鼻漏(こうびろう)は、鼻水がのどに垂れ込むことで刺激になって咳が出ます。
乳幼児期(0〜5歳)には、風邪を引いたあとに鼻水ががズルズルと続き、後ろに垂れ込んで咳の原因となります。幼児期以降(5歳〜)では、花粉症などのアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が原因となります。

そのため、お子様は鼻詰まりや鼻水の症状がみられます。子供は鼻をかむのが上手にできないことも多く、鼻をすすることがよくみられます。また咳は、汚い痰の混じった咳で、起床後に多くみられるのが特徴です。

アレルギー性鼻炎では、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬・ロイコトリエン拮抗薬)やステロイドの点鼻薬などが効果があります。副鼻腔炎では抗生物質が有効です。

気管支喘息

喘息では、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)を伴う咳がみられます。咳は夜間や早朝に強く、1日の中でも症状に変動があるのが特徴です。また季節や寒暖差でも症状が悪化したりすることがあります。肺機能検査やアレルギー検査を実施して診断が得られれば、吸入薬による治療を行います。吸入薬を開始すると、咳は比較的早く(1週間程度)で改善してきます。

気管支喘息

百日咳

百日咳では、嘔吐してしまうような激しい咳が続きます。息を次ぐこともなく「ケンケンケンケン」とする咳が特徴です。百日咳では、平均51日間咳が続くと言われており(名前は100日となっていますが…)、長い期間続くことがわかります。発症から約3週間は他の人に移す可能性があり、抗生物質を投与することで他の人への感染を減らすことができると言われています。

感染後咳嗽(がいそう)

感冒後咳嗽(がいそう)は、かぜ症状をきっかけに咳が長引くということが特徴で、多くの場合自然によくなります。風邪などのウイルス感染症により気管支が傷ついて、刺激に敏感になっているため咳がでます。ただし、風邪をきっかけとして喘息が悪化することがあるので、喘息などの病気がないかどうか必要に応じて検査・治療を行います。感染後咳嗽では、胸部レントゲンや肺機能検査を行っても、特に異常はありません。

心因性咳嗽

心因性咳嗽(がいそう)とは、心理的なストレスが原因となって出る咳のことです。20歳以下の比較的若い方に多く、学校や家庭でストレスを抱えているケースが多く見られます。乾いた咳や犬が吠えたときのような咳が出ますが、何かに集中しているときや夜間は咳が出ません。多くは肺機能検査やレントゲン検査を行っても特に異常はありません。診断を誤り、多数の薬を使用すると、より不安感をかき立てて症状が悪化する場合があります。心因性咳嗽の場合は、薬での治療よりもカウンセリングやメンタル・精神科への紹介を行います。

 

特徴的な咳

オットセイが泣くような「クオックオッ」という咳
犬が吠えるような「ケンケン」という咳

このような咳は「クループ症候群」でみられます。また同時に発熱や息を吸うときの喘鳴(ヒューヒュー・ゼーゼー)がみられることが多いです。治療は吸入(アドレナリン)や、症状が強い場合はステロイド薬を使用することもあります。

咳はこちらのYoutube動画が参考になります。

動画を見る

息を次ぐこともなく「ケンケンケンケン」とする咳

このような咳は「百日咳」でみられます。発症してから2−3週間は特に咳がひどく、立て続けに激しく咳き込みます。咳込みは発作的で、咳き込んだあとに嘔吐することもあります。
抗生物質の投与を行うことで、他の人へ移す可能性を減らすことができます。

息を吐く時に「ヒューヒュー・ゼーゼー」といった喘鳴(ぜんめい)を伴う咳

このような咳は、「気管支喘息」でみられます。咳は、朝や夜間に悪化する傾向があります。その他にも、乳幼児期ではRSウイルスなどによる「気管支炎(細気管支炎)」でもこのような喘鳴がみられます。
吸入薬やステロイド薬を使用することで咳や喘鳴が良くなります。

 

長引く咳の検査

検査を行う目的は、長引く咳の原因として多い喘息の可能性がないか、他の重篤な病気(肺炎や結核など)の可能性がないか、を調べることです。

喘息の有無を調べる検査としては、検査が可能な年齢のお子様では、肺機能検査・気道抵抗性検査(モストグラフ)・一酸化窒素濃度測定・レントゲン検査・血液検査(アレルギー検査)などを行います。
乳幼児期(5歳以下)の子供では、肺機能検査などの検査ができませんので、主に症状や経過・身体所見から病気の原因を判断します。

気管支喘息では、息を吐くスピードが落ち、気道の抵抗性が上昇し、吐いた息の中に含まれる一酸化窒素の濃度が上がります。

また当院では、アレルギー検査として「イムノキャップラピッドアレルゲン」検査を行っています。これは指先から少量の血液を採取するだけで、8項目のアレルギー検査を行うことができます。具体的には、スギ・ブタクサ・カモガヤ・ヨモギ・シラカンバ・イヌ皮屑・ネコ皮屑・ヤケヒョウダニがあります。
(アレルギー検査でスギやダニに陽性で、花粉症もある場合は、舌下免疫療法を検討します。)

肺炎や結核などの場合には、胸のレントゲンで異常な影がみられます。

治療

咳の原因は多岐に渡ります。それぞれ治療方法が違いますが、以下に代表的な治療方法について説明します。

咳止め薬

咳止め薬の多くは、脳の咳中枢に作用し咳症状を緩和します。アスベリン・メジコン・フスタゾールなどは代表的な咳止め薬で、副作用も少ないことから最も多く処方されています。

去痰剤(痰を出しやすくする薬)

子供の場合、鼻水や痰が絡むことが咳やゼーゼー・ヒューヒューの原因になることがあります。カルボシステインやムコダインは、痰の粘り気を少なくして痰を出しやすくする効果があります。また気管支の細胞を修復して、抵抗力を高める効果もあると言われています。

鼻水を止める薬

上述したように、後鼻漏による咳(鼻水がのどのほうに垂れ込んで刺激で咳が出る)は、咳の原因と多くみられます。風邪の後にダラダラと鼻水が続く場合もあれば、アレルギー性鼻炎(花粉症)で鼻水が続く場合もあります。いずれの場合も、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)などの飲み薬が効果があることがあります。

吸入薬

主に喘息の場合、吸入薬を使用します。ステロイドや気管支拡張剤の吸入を行います。
フルティフォームやアドエアは、ステロイドと気管支拡張剤の両方が含まれており、オルベスコやパルミコートは、ステロイドのみが含まれています。

貼り薬

吸入が難しいお子様の場合は、気管支を拡げる薬として貼り薬を使用する場合があります。よく使用される貼り薬には、ホクナリンテープ・ツロブテロールテープといったものがあります。

 

院長からのメッセージ

診察子供の長引く強い咳は、本人もつらいですし、親御さんからみていても早く治して上げたい症状です。子供の気管支の発達はまだ未熟なため、大人よりも喘鳴や呼吸障害が出やすいといった特徴があります。また喘息の多くが幼少に発症するため、長引く咳の原因となっていることがあります。このようなケースでは、咳止めで様子をみていても良くなりません。特に3週間以上咳が続くような場合は、一度病院を受診したほうがよいでしょう。
当院では、肺機能検査やレントゲン・CT検査を始め、呼吸器に関する検査が充実しておりますので、お子様が長引く咳でお困りの場合は一度ご相談下さい。

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