花粉症などのアレルギー疾患に対する治療の中でも、長期的な効果や治癒を期待できる唯一の治療方法がアレルゲン免疫療法です。アレルギーの原因である「アレルゲン」を少量から投与することで、体を慣らしアレルギー症状を和らげる治療法です。
投与方法には、皮下注射で行う皮下免疫療法と舌のしたに投与する舌下免疫療法の2つの方法がありますが、当院では舌下免疫療法を行なっています。またこの治療は、健康保険の範囲内で実施することができます。
費用は3割負担の場合、初診時が検査・診察・薬代で3000-5000円程度、定期通院が月1回で2000-3000円程度になります。
舌下免疫療法の種類と効果は?
舌下免疫療法では、スギ花粉を対象とした「シダキュア」とダニアレルギーを対象とした「ミティキュア」があります。
それぞれの効果や有効性は以下のようになりますが、概ね80%の方に効果があります。薬の効果が出てくるまでに2〜3ヶ月程度必要とし、治療期間は3〜5年間が推奨されています。
舌下免疫療法の注意事項
何歳から投与ができるか?
5才以上の方であれば治療を受けることができます。
舌下免疫療法を受けることができない方
- 重い喘息の方
- 抗がん剤を使用している方
- 妊娠している方
- 自己免疫疾患(膠原病など)を有する方
- β遮断薬を内服中の方
- この薬でショックを起こしたことがある方
治療までの流れ
くしゃみや目の痒みなどの症状・季節性・持病などを問診にて確認したのちに、アレルギー検査を行います。
アレルギー検査は、主に採血検査で特異的IgE検査を行い、何に対してアレルギーがあるか調べます。当院では以下の3つの検査を主に行なっています。
特異的IgE検査
イムノキャップ ラピッドアレルゲン8
「スギ」「ダニ」を含む8項目のアレルギー検査ができます。メリットは、結果が約20分で判明することと、指先からごく少量の採血をするのみでよいことです。 注射器は使いませんので、注射が苦手な方やお子様でも気軽に受けられます。3割負担の方で約3000円程度かかります。
VIEW-39
VIEW-39では、39項目と様々なアレルゲンを調べることができます。含まれる検査項目は、「スギ」「ダニ」などの吸入に限らず、食物やラテックスなどの他のアレルギーの種類を同時に調べたい方に向いています。結果は数日程度かかります。検査項目が多数に及ぶさめ、他の検査方法よりも少し費用がかかります。3割負担の方で約5000円程度かかります。
単項目測定(CAP法)
個別のアレルゲンについて検査が可能です。花粉症の場合は、スギ、ヒノキ、カモガヤ(もしくはオオアワガエリなどのイネ科花粉)、ブタクサ、ヨモギ、ハンノキなどを調べます。状況に応じて、ダニやネコ・イヌなどの通年性アレルギー、ガやアルペルギルスなどを調べます。最大13項目まで検査が可能で、一項目あたり330円(3割負担)です。
治療スケジュール
- 初回はいずれの舌下免疫療法も院内で内服し、30分間様子を見ます。
- 開始翌日からは、自宅で内服します。
- 開始1週間は少量で投与し、その後増量して継続します。
- スギ花粉免疫療法に関しては、スギの飛散時期である1月〜5月の間は避けて開始します。
- 治療期間は3〜5年間が推奨です。
- 内服開始後1ヶ月以降で、副作用もなく安定している場合はオンライン診療でも通院可能です。
- イムノキャップラピッドアレルゲン8の場合は当日結果が出るので、ダニ・スギに陽性の場合は当日治療を開始できます。VIEW-39や単項目検査では、結果が判明するのに数日かかるので、後日来院していただいて、結果がダニ・スギに対して検査陽性の場合に治療を開始できます。
治療効果は…
- 効果が出てくるには最低2〜3ヶ月程度かかります。
- 約80%の方で症状の改善が見られます。具体的には、治療を受けた方の約30%程度で花粉症が治癒し薬が必要なくなり、約30%程度でかなり症状が楽になり薬の量が激減し、約20〜30%で症状はあるが以前より楽と答えられます。
- 3年間治療した場合はその後5年間効果が持続し、4-5年間治療した場合はその後7-8年間効果が持続したという報告があります。
副作用は…
- 口の中のかゆみ、むくみ、不快感
- のどの刺激感
- 唇の腫れ
などが一般的で、治療開始後1〜2ヶ月の間に起こります。徐々に軽減してくることが多く、抗ヒスタミン薬を一緒に内服すると起こりにくいと言われています。重篤なアナフィラキシーの発生は、0.1%未満と非常に低く、今のところ死亡例は確認されていません。
価格
治療費は治療薬によって多少異なりますが、初回は検査料や薬代を含め保険適用(3割負担)で3,000~5,000円ほどかかります(行う検査により変動あり)。
その後の定期的な通院の費用は、診察代と薬局での薬代とを合わせて1か月あたり2,000~3,000円ほどです。
よくある質問
シダキュアとミティキュアの併用はできるの?
可能です、副反応も単剤と比較してあまり変わらないと言われています。初めはどちらか一方から開始します。投与はどちらから開始しても良いですが、投与開始後1ヶ月後に併用を開始します。副作用がある場合は、併用の開始時期を遅くします。スギ花粉の飛散時期はシダキュアを導入できません。
飲み忘れた場合どうすれば良いの?
数日以内であれば、特に問題がないのでそのまま再開していただいて構いません。1ヶ月以上休薬してしまった場合は、当院では少量から再開しています。2-4 週間の休薬の場合は、院内で元の量で再開し問題なければ治療を継続していただきます。
喘息があるけど、舌下免疫療法はできますか?
喘息の病状が落ち着いている場合には治療が可能です。具体的には、軽症から中等症の喘息の方で、発作がなく、一秒量が70%以上ある場合に実施できます。ダニアレルゲンの患者さんでは、舌下免疫療法を行うことで、鼻炎症状に加えて喘息症状もよくなることが示されています。
薬はどんな味がしますか?
シダキュア・ミティキュアともに無味です。ほとんど味がしません。
舌下免疫療法中に、花粉症の薬を飲んでも大丈夫でしょうか?
大丈夫です。花粉の飛散が多い時期は、くしゃみや鼻水・目のかゆみなどの花粉症症状に対して、花粉症治療薬を使用していただいて構いません。点鼻薬・点眼薬も問題ありません。ステロイドの内服薬を使用する場合は、申し出てください。