食物アレルギーでは、食後数分から2時間以内に蕁麻疹や下痢・嘔吐・腹痛などの症状が出ます。
当院では食物アレルギーの血液検査(特異的IgE抗体検査:詳細はこちら)を行っています。検査が陽性=食物アレルギーがあるというわけではなく、症状とも併せて食物アレルギーと診断します。ただし、検査値が高ければ高いほど原因アレルゲンである可能性が高くなります。
検査が陽性で症状があれば、必要に応じて原因食物の除去を行います。また当院では、アナフィラキシー症状(血圧低下・呼吸困難など)が出たことのある方に、緊急対処用のエピペンを処方することが可能です。なお当院では、食物経口負荷試験は行っておりません。
特定の食物で蕁麻疹や下痢・嘔吐・腹痛などの症状が出たことのある方は、一度検査を行ってみてはいかがでしょうか?
牛乳・乳製品
牛乳アレルギーは、食物アレルギーの子供のうち約20%を占め、鶏卵についで第2位を占める。6歳ごろまでに約70%程度が耐性を獲得すると報告されています。
牛乳の中に含まれるタンパク質が主なアレルゲンとなっており、牛乳の中のタンパク質は大きくカゼイン(80%)とホエイ(20%)に分けられる。カゼインは加熱しても抗原性を失いにくく(変性しにくい)、アレルゲンとならないようにするためには加水分解が必要です。
当院では、牛乳、カゼイン、ホエイの成分(αラクトアルブミン・βラクトグロブリン)などがの血液検査を実施しています。
小麦アレルギー
小麦アレルギーは、子供と大人で原因や病気の発生機序が異なります。子供場合、他の食物アレルギーと同様に即時型アレルギーで発症しますが、大人の場合は小麦を摂取後に運動することでアレルギー症状が出現するタイプ(食物依存性運動誘発アナフィラキシー:FDEIA)が見られます。
小麦に含まれるアレルゲン蛋白としては、グルテンが知られており、グルテンはさらにグリアジンとグルテニンに分かれます。この中では、ω-5 グリアジンが大人の小麦アレルギーの原因となることが知られています。
また小麦は、大麦やライ麦、オート麦などと交差抗原性(両方にアレルギー反応が出現)があり、症状が誘発される可能性は約20%程度といわれています。
そのほかに注意すべきアレルギー症状として「パンケーキ症候群」というものがあります。これは夏場に、ホットケーキミックスやお好み焼き粉を開封後に常温で放置すると、中でダニが繁殖し、そのダニにアレルギー反応を起こすことがあります。加熱してダニが死んでいてもアレルゲンは身体に影響を与えるので、加熱の有無は関係ありません。
当院では、小麦、大麦、オート麦、ライ麦、グルテン、ω-5 グリアジンの血液検査を行っています。
甲殻類(エビ・カニ)
エビとカニのアレルゲン原因タンパク質(トロポミオシン)はよく似ているため、エビアレルギーの方がカニを食べた場合に約64%の方がアレルギー症状を起こすといわれています。
症状として最も多いのが、蕁麻疹などの皮膚の症状で、ついで口の中のかゆみなどの症状です。
エビとカニのアレルゲン原因タンパク質(トロポミオシン)は、熱で分解されないので、加熱しても症状が出る可能性があります。
口の中のかゆみ程度の症状の場合、少量の摂取は可能ですが、蕁麻疹などの症状が出た場合は避けた方が望ましいと思われます。
また甲殻類は耐性獲得が難しい(治らない)といわれていますが、個々の患者様によって異なるのが現状です。
当院では、エビ・カニ・ロブスターの血液検査(粗抗原)を行っています。 その他、イカ・タコ、貝類としてアサリ・カキ・ホタテ・ムラサキガイ(ムール貝)などの検査を行っています。
肉類
肉類(牛肉・豚肉・鶏肉)の食物アレルギーには、大きく以下の二つがあります。
- Pork-Cat syndorome:ネコの飼育が原因
- マダニによる獣肉アレルギー:マダニに噛まれたことが原因
Pork-Cat syndorome
ネコを飼育している方の一部が、ネコのアレルゲンに感作されて、そのたんぱく質が似ている豚肉や牛肉へも食物アレルギーを起こす状態です。比較的加熱不十分な豚肉で症状を起こすことが多いといわれている。
マダニによる獣肉アレルギー
マダニに噛まれることで、その唾液中に含まれるα-Galに感作され、同様にα-Galを豊富に有する獣肉(牛肉・豚肉・鶏肉など)を食べた場合に、アレルギー反応を起こす状態です。(α-Galは保険診療の検査で調べることができません)
当院では、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉の血液検査を行っています。
フルーツ
フルーツによる食物アレルギーは、ハンノキなどの花粉との交差反応で発症するものとそうでないものがあります。交差反応とは、この場合花粉症の人が特定のフルーツのアレルゲンに対して間違えて反応してしまいアレルギー症状がでます。
花粉症と関連するフルーツアレルギーでは、口の中のかゆみや違和感などで発症することが多くを占めます。リンゴ・桃・サクランボ・セロリ、ヘーゼルナッツ、キウイなどのフルーツが花粉によりアレルゲンとして感作され、このような症状が出ることが多い。
一方で、花粉と関係のないバナナなどは、年齢を重ねるに連れて耐性を獲得する(改善してくる)ことが多いといわれている。
納豆
納豆アレルギーのある患者様の多くは、サーファーであることが知られています。これは、クラゲの触手に含まれるPGA(ポリガンマグルタミン酸)が、納豆の粘り気の成分と同じであることが原因です。
納豆アレルギーでは、摂取後に症状が出るまでに時間がかかることが多く、半日経ってから蕁麻疹や呼吸困難が出現します。
血液検査ではPGAに対するIgE抗体は測定することができないので、プリックテストなどで診断します。
院長からのメッセージ
食物アレルギーは、種類も多く、症状も多彩です。また各年齢で、なりやすい食物も異なってきます。
幼児期や小学生では、過剰に避けて食べてしまうと栄養不良になってしまいますので、検査結果と症状を照らし合わせ適切に対応する必要があります。
またアナフィラキシーなどの重篤な症状が出る場合は、当院にてエピペンなどを処方することが可能です。アレルギー症状が出てお困りの場合は、一度当院へご相談ください。