高血圧は無症状でも放置はNG!!
高血圧は血圧が高い状態が続く病気ですが、そのほとんどが無症状です。「サイレント・キラー (沈黙の殺し屋)」とも呼ばれ、放置した場合に気づかないうちに病気が進行し、気づいた時には全身の動脈硬化が進んで、心筋梗塞や脳梗塞、腎臓病などになってしまっています。高血圧で体調に変化がない方といって放置はせず、早期に生活習慣の改善や治療を行いましょう。
なぜ血圧が高いと良くないのか?
血圧が高い状態が長く続くと血管はいつも張りつめた状態におかれ、次第に血管の柔軟性がなくなり血管壁が厚く、しかも硬くなります。この動脈硬化は、臓器の血流を悪くし、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こします。また血圧が高いことにより心臓や腎臓への負担がかかり、徐々に心不全や腎不全になってきます。高血圧は、全身に様々な病気を引き起こします。
高血圧の診断
高血圧の診断は、診察室の血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上となります。
診察室血圧が130-139/80-89 mmHg (家庭血圧125-135/75-84 mmHg)の方は高値血圧と呼ばれており、高血圧と正常血圧の中間にあたります。高値血圧の方は、今後高血圧に発展する可能性が高く、生活習慣病の改善が必要と考えられます。また正常の方に比べると、脳血管疾患の発症リスクが高いと考えられています。
高血圧・高値血圧の方では、血圧目標値を診察室血圧が130/80 mmHg (家庭血圧125/75 mmHg)未満となるように治療を行います。高齢者や脳血管疾患を持つ方では、少し高めの目標値を設定することもあります(診察室血圧で140/90 mmHg、家庭血圧で135/85 mmHg)。
白衣高血圧
診察室で測定した血圧は、普段とは異なる環境であったり、病院に来ると緊張することもあって家庭血圧よりも高く出る方がいます。これを「白衣高血圧」と呼び、実に診察室の血圧で高血圧と診断された方の15-30%存在すると言われています。そのため、家庭血圧を測定することが有用となってきます。白衣高血圧では、血圧が正常範囲の方と比較すると脳心血管病リスクがやや高く、持続性高血圧への移行も報告されていています。
家庭での血圧測定
家庭血圧は診察室や待合室で測定した血圧に比べ、臓器障害や心臓・脳血管の病気とより密接な関係を持ちます。そのため高血圧の方では、自宅での定期的な血圧測定が重要となってきます。 自宅で血圧を測定する場合の注意点について以下にまとめてあります。
いつ測定する?
朝と夜の2回測定します。できればそれぞれ2回測定し、平均値を記録しましょう。
どのように測定?
座って安静にした状態で1-2 分後に測定しましょう。すぐ測ると高く血圧が出ることがあります。血圧計は心臓と同じ高さにしましょう。
どのような血圧計がよいの?
血圧計については、色々な機種が販売されていますが、大きく分けて手首で測定するタイプと上腕(うで)で測定するタイプがあります。 手首式の血圧計のメリットは、手首に巻きつけるだけで測定できる手軽さと、小型で場所を取らなくて済むという点。ただし、動脈の閉塞などの循環障害を患っている場合には、上腕で測定した場合と数値に大きな差が出る可能性があり、数か月かに一度は上腕式で計測し比較することがおすすめです。 上腕式は素肌に付けた方が正確な数値が出るため、袖をまくったりする必要があります。数値の正確性については手首式よりも上腕式の方が優れているので、毎日正しく血圧を測定して管理する必要がある人は、こちらを選ぶのがおすすめです。
現在では、スマホやアプリに対応した血圧計が多く販売されています。このような血圧計は、自分で記録をつける必要がないため、簡単に管理できます。アプリなどの対応がない方には、血圧手帳をお渡ししますので、記入して持参していただくことをお勧めしています。
高血圧の方に行う検査
高血圧は動脈硬化をまねき、心筋梗塞・脳梗塞・脳出血・腎不全などの様々な合併症を引き起こします。また高血圧の方は、生活習慣が不規則のため、脂質異常症(高コレステロール血症・中性脂肪)、糖尿病・高尿酸血症などの疾患を併せ持つことが非常に多くあります。
そのため高血圧の方には、これらを調べる検査を行います。血液検査・心電図・頸動脈エコー・尿検査・胸部レントゲン・ABI検査などが含まれます。
生活習慣の改善
食事療法
食塩制限:一日6g以下を目標としてください。野菜・果物の積極的な摂取を心がけてください。カリウムを多く含む野菜・果物の摂取は、血圧上昇を抑制する効果があります。
運動、適正体重の維持(BMI 25未満)
BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割ったもので、肥満の程度を表します。BMIが25以下になるように体重を維持しましょう。
運動に関しては、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動が推奨されています。一日30 分程度を目標に、心拍数が100-120回程度となるぐらいの運動が目安です。とはいえ運動を継続するのは難しいので、長続きする工夫が重要です。一駅前で降りて歩く、パートナーと一緒に運動するなど自分なりに長く続くように工夫してみてください。また体重4.0kgの減量は、4.6gの減塩と同等の効果があると言われており、減塩が難しい場合は体重を減らすことを目標にするのも良いかと思います。
節酒
過度な飲酒習慣は、血圧上昇の原因となり、ひいては脳卒中や心房細動、睡眠時無呼吸を引き起こします。高血圧の方では、アルコールで男性20-30ml/日、女性10-20ml/日以下に制限することが勧められています。
高血圧の薬物治療
血圧目標値
治療による血圧の目標値は、診察室血圧が130/80 mmHg (家庭血圧125/75 mmHg)未満です。高齢者や脳血管疾患を持つ方では、少し高めの目標値を設定することもあります(診察室血圧で140/90 mmHg、家庭血圧で135/85 mmHg)。
高血圧や高値血圧の方でも直ちに薬物治療を開始するわけではありません。糖尿病・脂質異常症や喫煙などの他の要素とも合わせて、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクを評価し、治療方針を決めます。
高血圧の治療薬
血圧を下げる薬(降圧薬)は、たくさんの種類があります。薬の効く機序によっていくつかのタイプがありますが、最も使われているのがCa拮抗薬、ARB、利尿剤です。これらの薬を最初は少量で開始し、血圧を見ながら2〜4週間ごとに薬の量を増減します。いきなり血圧を大きく下げるとふらつきやめまいなどの症状を起こすことがあるため、少しずつ下げていきます。1種類の薬で血圧が下げることができない場合は、複数の薬を併用します。現在では配合剤も出てきているので、負担感なく内服を継続できるように工夫します。それぞれの降圧薬には、特徴や副作用があるので、以下を参考にしてください。
院長からのメッセージ
高血圧は、無症状でゆっくりと体をむしばむ危険な病気です。放置すれば、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などの色々な病気になってしまいます。そうなる前に、適切な運動習慣や食生活を身につけて、健康な生活を守ってほしいと思います。高血圧で内服治療に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、まずは血圧の良好な状態を目指しましょう。当院では、生活習慣の改善や降圧治療に対して無理な提案はしません。その人にできる範囲から始められるよう工夫しますので安心してください。皆さんの不安も疑問も受け止め、信頼関係を築いていきたいと思います。一人で悩まず、気軽に相談してください。